卓球ラケット開発の悲喜こもごも(6)
合板プレートの山脈を越えろ
卓球ラケットの開発には大きく分けて、2つの要素があり。一つは「グリップも含めたブレード形状の設計」、もう一つは「ブレードの木材や特殊素材の積層構成」と以前にも記している。すでに、「グリップも含めたブレード形状の設計」に関しては、商品として自信をもって出せるクオリティに達したため、「ブレードの木材や特殊素材の積層構成」にとりかかる。実際のところは、2つの要素は相関関係が高いため、単純にブレードが出来たから積層構成という順序ではないが、ここでは話を単純にして進めたい。
ご存じの通り、世の中には針葉樹・広葉樹の多くの樹種があり、木材の材種は、ラケットの性能に大きく影響する。同じように多くの特殊素材がある、炭素繊維からアラミド系繊維その他様々だ。それだけでない、接着剤も種類も多様だ。一般的に接着剤というと水溶性の木工用ボンドが有名だが、溶剤が水ではない接着剤も多く性質も異なる。これらの木材、特殊素材、接着剤をどう積層構成するかということが、弾みや打球感に影響を与える。細かいことを言えば木材の厚さ0.1mmの違いがどうラケットの影響するのかを、しっかりデータを取り把握していく作業が開発で重要なポイントだ。
結論を言うと、上の写真の通りの縦横の長さが決まっている合板プレートをひたすら制作した。写真は一部だが、このような特殊素材を含んだ合板プレートは、現在でも倉庫に数百枚が山のように積まれている。合板プレートはラケットの形に切り出さないと重さや性能も厳密には分からないのだが、プレートもラケットも寸法が決まっているため、切り出し後の重量は計算で出すことができ、弾みに関してしても、切り出し後に反発性がアップするがそれも一定なため、合板プレートを制作した段階で、その後作成されるラケットの重量と性能はおおよそ把握できることになる。そのため多数の合板プレート制作により性能を把握し、選抜後、使えそうなもののみ下の写真のように切り出し、卓球ラケットを制作して試打を繰り返すかたちになる。
山ほどの合板プレートを制作しても、思うような重量や弾みにならず、さらに山ほどの合板プレートを制作する。「ブレードの木材や特殊素材の積層構成」の仕事は、弊社の場合、合板プレートの山脈を縦走するようなものです。おそらくラケットを作り続ける限り終わりはないでしょう。