卓球ラケットメーカーWINGSPANのスピリット
卓球メーカーの仕事を大きく分けると2つある。あえて抽象的な言い方をすると一つが「構想」の仕事。そしてもう一つは「実行」の仕事である。さてこれを卓球ラケット製作という限定された仕事にあてはめてみると「構想」は「ラケットの開発」そして「実行」は「ラケットの生産」となる。さらに細分化させると「構想(ラケット開発)」には、ラケットの設計、ロゴの作成、ラケットのネーミング、販売価格の設定、広報戦略等、経営的側面、設計者的側面が含まれる。「実行(ラケット生産)」はラケットの生産、品質管理、生産の効率化、治具の作成等など様々だ。
この「構想」と「実行」の両方の仕事を行えるのが、古来より日本では職人とよばれ、ドイツではマイスターと呼ばれる人たちだ。西洋では特に面白い組織がある。ギルドである。これは中世から近世にかけてヨーロッパの都市で、商人や手工業者が自らの職業の利益を守るために結成した同業者組合のことで、商品や技術の品質管理、価格の調整、労働条件の規制などを行い、会員の経済活動を保護・支援する役割を担っていたのだ。さらにギルドの特筆すべき点は、徒弟制度と称される厳格な身分制度が存在し、その頂点に立つ親方は職人・徒弟を指導して労働に従事させていたことだ。そして歴史的に見れば、これらギルドは中世末期の資本主義的な生産が始まることで、衰退そして廃止の憂き目にあうことになる。
さて、現在はどうだろう。資本主義的な生産が進化した現在は、古来の職人に代わり、トップダウンで生産される製品の作成工程はマニュアル化され、さらにコンピューター等を使用し、制御され、細分化された生産の仕事にサラリーマンが従事することが一般的になった。「構想」と「実行」の業務が完全に別れ、業務もさらに細分化され、その仕事にサラリーマンが従事する。このような大きな企業のありかたは、ある意味で資本主義社会の進化系とも言えるだろう。良い悪いとは別に、行きつくべきしていきついた形とも言える。
WINGSPANの仕事は現時点で「ラケット開発」と「ラケット生産」の業務を分けず一貫して行えることが理想だと思う。「ラケット生産」の業務を行う中で「ラケット開発」のヒントになる事もある。また「ラケット開発」の業務を行う中で「ラケット生産」のヒントとなる事も少なくない。どちらも経験することで、さらに言えばラケット1本を合板の成形から、ラケット完成後の箱詰めまで業務を把握し理解できることは大きな優位性とも言える。その意味では、オールマイティな仕事をしていた古来の日本の職人や、西洋のギルドやマイスターのスピリットを受け継ぐべく、WINGSPANは他の製品とは、替えの効かないものづくりを今後も行っていきたい、などと漠然と考えている。
